幽霊が頭につけている三角の布って? 7月11日

釋一心のひとこと

「お化け」や「幽霊」と聞いて、どのような姿を想像されますか? 頭に白い三角の布を付け真夜中の墓場をさまよう…。

さて、この幽霊の頭についている△。『これは一体何なのでしょうか?』というご門徒さまからの質問です。

※お葬儀のとき浄土真宗、一部の宗旨・宗派は旅支度が不要なため、天冠は、つけません。

調べてみました。ちゃんとした名前や意味があります。この布は「天冠」と呼ばれるもので、「てんかん」「てんがん」と読みます。これは亡くなった方が、あの世(黄泉の世界/冥土)に旅立つ時に着る「白装束(真っ白いお着物)」のひとつで、頭に付ける「冠」だそうです。これは、日本に仏教を伝えた中国の影響を受けています。中国では正装をするとき、必ず頭に冠を付けていたそうです。

「閻魔大王さまに失礼にならないように冠をつけて正装をしなければいけない」「閻魔大王さまの心証を悪くしないように」「死者が地獄のタタリから逃れるために」「身分の高さを冠で表現した」と諸説あります。

因みに、死装束とは、冥土に旅立つときの衣装のこと。「経帷子(きょうかたびら)」と呼ばれる白い着物を着て、手には手甲(てっこう)、脚には脚絆(きゃはん)を付けます。頭からは頭陀袋(ずだぶくろ)を下げ、その中には三途の川の渡り賃である六文銭(ろくもんせん)を入れます(もちろん紙製)。さらに網笠をかぶり、草履を履き、利き腕には杖を持ちます。

昨今では実際に故人様の頭へ天冠を付けることは少なったそうです。なぜなら、「幽霊の頭に白い三角」のイメージが強いため、実際に着けてしまうと、天冠が目立ちすぎてしまうからだそうです。

昔、お葬式で棺のなかにあるご遺体が、△を被っているお姿を見たことがあります。確かに幽霊のように見えて、不気味で怖かったことを覚えております。ご遺体には血の気がなく、顔色が青白いからなおさら幽霊のようにみえたのかもしれません。

浄土真宗の場合は死装束を身につけません(死者は冥土で四十九日間旅をするのではなく、すぐに阿弥陀仏に救われて、極楽浄土に仏として生まれかわるという教義のため)。死装束のかわりに故人が愛用していた服を着せて納棺します。合掌 南無阿弥陀仏